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  2019年04月25日    

Dr山見のダイバーズクリニックvol.24 めまい

めまい持ちのダイバーのかたは日常的だからと軽く考えてませんか? もし、ダイビング時にめまいが起きたら? 難聴や耳鳴りが起きたら? 一度、めまいとダイビングを考えてみましょう。 


ダイビング時のめまいは病気?

●ダイビング時のめまいに悩む方は意外に多いようですね。

山見:ダイビング中のめまいにはいくつかのタイプ*1 がありますが、どんなときに起きるのか、どれくらい続くか、ダイビング後も続くか、合併する症状はあるか、などによってある程度鑑別することができます。

●どんな種類があるのですか?

山見:主なめまいを表1に挙げました。ダイビング時のめまいは、「生理的なめまい」と「病的なめまい」の2つに大きく分けることができます。

●生理的なめまいが起きるのはどういうときですか?

山見:潜降中はスクイズが原因で、浮上中はリバースブロックが原因で、めまいや浮動感がみられることがあります。

●水圧の変化が影響するのですね。

山見:潜降中、中耳腔が陰圧(中耳腔スクイズ)になると内耳が中耳腔に引っ張られて回転性めまい(ときに浮動感)が見られることがあります。スクイズを起こしている感覚がなくても、中耳腔が陰圧になり内耳が刺激されるとめまいが発生することがあります。数秒〜数10秒続きますが、少し浮上するか、耳抜きをして中耳腔スクイズが解消されると改善します。スクイズによるめまいは、潜降速度が速いと起こりやすいので、繰り返す方はゆっくり潜るようにしましょう。

●浮上中も同様でしょうか?

山見:中耳腔が陽圧(中耳腔リバースブロック)になると、内耳が圧迫されて回転性のめまい(ときに浮動感)が見られることがあります。

気になるふわふわ感

●耳に水が入って、くらっとしたこともありました。

山見:外耳道(耳の穴)に水が入ったために生じるめまいも、生理的なものです。外耳道に水が入るのは、真上を見上げたとき、逆立ちをしたとき、片方の耳を上に向けたときなどです。耳の空気がポコッと排出された代わりにスーッと海水が入ってきます。外耳道の奥に海水が入ると内耳が刺激されて回転性めまいが発生することもあります*2。数10秒経つと外耳道内に入った海水は温まるためめまいは消失します。生理的な現象なので心配ありませんが、めまいが起こっている最中は上下の感覚がわからなくなるので溺れないようにしなければいけません。慌てずロープ、岩、バディなど、体を確保するものにつかまるなどして治るのを待ちましょう。

●安全停止中はどうですか?

山見:水中で海面を見上げたとき、ふわふわした状態をめまいと感じるという方がいます* 3。浮上中や安全停止中によく見られます。水中で上を向いたとき、自分の体が浮き気味(プラス浮力)か、沈み気味(マイナス浮力)かわからない感覚をめまいと表現される方もいます。いずれも病的なめまいではないので心配ありません。

●ダイビング後に起きる生理的なめまい、もありますか?

山見:ボートダイビングのあと、陸に上がってから現れる浮動感があります。これは、波に揺られた感覚を、中枢神経が記憶しているために生じる生理的めまいです。ダイビングをした日の夜に気づくダイバーもいますがひと晩寝ると消失します。ボートに乗る機会やダイビング経験増えるとあまり感じなくなります。

難聴や耳鳴りを伴うときは要注意

●ダイビングに関連する病的なめまいについても教えてください。

山見:水中で、頭を後ろに反らしたり、振り返ったりしたときに誘発されるのであれば良性発作性頭位めまい*4 の可能性があります。通常、数秒〜数10秒続きますが、自然に治ります。難聴や耳鳴りを伴うことはありません。誘発される頭の動きをしないことである程度予防できます。

●ダイビング後もめまいが続くと心配です。

山見:難聴や耳鳴りを伴うとき、または翌日になってもよくならないときは病的めまいの可能性が高くなります。外リンパ漏、減圧症、動脈ガス塞栓を疑う必要があります。それぞれのめまいの特徴は以下の通りです。

疑うべき病気はいくつもある

●ダイビングと直接関係がないめまいもありますね?

山見:内耳、脳、心臓の病気で発生するめまいが、ダイビング時に偶然見られることがあります。

●耳の病気ですか?
山見:原因となる内耳の病気には、突発性難聴、メニエール病、前庭神経炎、良性発作性めまい、減圧症、聴神経腫瘍、内耳炎、一過性前庭障害、前庭性てんかんなどがあります。いずれも、めまい、難聴、耳鳴り、耳の閉塞感などの症状を伴うことがあります。

●もう少し詳しく教えてください。

山見:中耳腔が陽圧(中耳腔リバースブロック)になると、内耳が圧迫されて回転性のめまい(ときに浮動感)が見られることがあります。

●浮上中も同様でしょうか?

山見:突発性難聴はダイビングと関係ないと思われがちですが、ダイビングツアー中やツアー後に発症することがあります。難聴だけでなくめまいを伴うこともあります。ダイビング後に発症した突発性難聴は、めまいや難聴を伴う減圧症と慎重に鑑別しなければいけません。メニエール病も頻度が高い病気です。メニエール病の既往のある方が、ダイビングツアー中の疲れやストレスが誘因になり発症することがあります。前庭神経炎もダイビングツアー中に発症すると減圧症と鑑別しなければいけないことがあります。めまいは数日から数週間続きます。発症する7 〜10日くらい前に風邪症状が見られることがあります。


*1:めまいのタイプは大きく3 つに分けることができる。ぐるぐる回るような感じがする回転性めまい、ふわーと感じる浮動感、立ちくらみ様のめまいがある。
* 2:内耳のリンパ液が冷水により対流現象を起こすため。
*3:水中で感じる浮動感は生理的な現象で個人差が大きい。健常人でも、上を向くとめまいを感じやすく平衡感覚は鈍くなる。正面や下を見ているほうがめまいは感じにくい。

コラムニスト

山見 信夫(やまみ・のぶお)先生
医療法人信愛会山見医院副院長、医学博士。宮崎県日南市生まれ。杏林大学医学部卒業。宮崎医科大学附属病院小児科、東京医科歯科大学大学院健康教育学准教授(医学部附属病院高気圧治療部併任)等を経て現職。学生時代にダイビングを始めインストラクターの資格を持つ。レジャーダイバーの減圧症治療にも詳しい

*サイト内では、メールによる健康相談も受けている(一部有料)

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ダイビングを楽しむ上で気になる身体の問題を潜水医学の専門家で、自らダイビングインストラクターでもある山見信夫先生 ...
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カテゴリ: ダイビング


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