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  2019年01月05日    

Dr山見のダイバーズクリニックvol. 14 アレルギー 3

ア㆑ルギーについての3回目は、ダイバーにも悩んでいる人が多いア㆑ルギー性鼻炎のお話。薬の服用についてもあわせてうかがいました。


鼻水、くしゃみ、鼻づまり。やっかいな「アレルギー性鼻炎」

̶̶——「アレルギー性鼻炎」という名称はよく耳にしますが、どういう病気なのでしょうか?

山見:ハウスダストや花粉などの抗原が体に侵入することで生じる、過剰な免疫反応をアレルギーといいます。アレルギー反応のうち、鼻水、鼻づまり、くしゃみなどの鼻炎症状が現れる病気をアレルギー性鼻炎といいます。

——症状が出やすい季節はあるのでしょうか?

山見:アレルギー性鼻炎は、1年中症状が見られる通年性、花粉などが飛散する時期だけ症状が現れる季節性、原因となる抗原が一時的に侵入したときだけ発症する一過性があります。

——花粉症もアレルギー性鼻炎の1つということでしょうか?

山見:スギ花粉症もアレルギーですが、鼻炎、結膜炎、ときに喘息などを引き起こす病気の総称として付けられている病名です。

——喘息だとアレルギー性鼻炎になりやすい、ということはありますか?

山見:気管支喘息やアトピー性皮膚炎などの病気を持っている方は、アレルギー性鼻炎を持っている割合が高い傾向があります。

——アレルギー性鼻炎はダイビングにどんな影響がありますか?

山見:アレルギー性鼻炎で鼻粘膜が腫れると、中耳腔や副鼻腔の気圧外傷(スクイズやリバースブロック)を起こすことがあります。また、日頃、症状がない方でもハウスダストやダニが多い宿泊施設に泊まった翌日、耳や副鼻腔が抜けなくなることもあります。

薬で症状を抑えてダイビングをしたいなら

——薬で症状を抑えてダイビングをする人もいますね。

山見:薬を飲んだらダイビングをしないのが基本ですが、現実には薬を使ってダイビングする方が少なからずいます。通年ダイビングをしている人を対象とした調査では、アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)のダイバーは全体の30%近くを占め、そのうちの20%以上の方が抗アレルギー薬を服用してダイビングをした経験があります。

——やむをえず、薬を飲んでダイビングをするときはどんなことに注意するべきでしょうか?

山見:抗アレルギー薬のうち、特に抗ヒスタミン薬には眠気などの副作用があり、ダイビング中、窒素酔いにかかりやすくなるので注意が必要です。副作用が現れやすい薬はできる限り使わないようにしましょう(表1)。

——抗ヒスタミン薬にもいろいろな種類があるのですね。

山見:第1世代の抗ヒスタミン薬は即効性はありますが、注意力や判断力が低下するためダイビングには向きません。アレルギー性鼻炎に対してもっともよく使われる第2世代の抗ヒスタミン薬は、第1世代より眠気などの副作用は少ない傾向があります。第2世代抗ヒスタミン薬の中でも、ほとんど眠気が見られない薬と少ないながらも現れる薬があります1※。

——見極めのポイントはありますか?

山見:表1に注意するべき薬と推奨される薬に印(△、○、◎)を付けておきましたので参考にしてみてください。

——アレルギー性鼻炎に効くのは抗ヒスタミン薬だけでしょうか?

山見:抗ヒスタミン薬以外の抗アレルギー薬は、眠気が少ないので比較的リスクは少ないと考えられています。

服薬は慎重に。自分にあった薬を見極める

ーーほかにも服薬時に気をつけたほうがいいことはありますか?

山見:薬の効果は一般的にいわれている時間より長かったり短かったりします。陸上で効果が見られても水中では効果が見られないこともありますし、陸上では見られなかった副作用が水中で現れることもあります。 薬が効いてスクイズを起こさず潜降できても、浮上の際にリバースブロックを起こすこともあります。薬を使ってダイビングするのは慎重であるべきです。

——自分にあう薬の見つけ方はありますか?

山見:1〜2週間飲まないと効果が判定できない薬もありますから、ダイビングに出かける少なくとも1か月程度前から試してみる必要があります。

——どんな点に注意すればいいでしょう?

山見:効果がすぐに見られない薬のほうが眠気などの副作用が少ない傾向があります。また、1剤で効果が現れないときは効果をみながら2〜4剤追加併用することもあります。副作用が現れやすいとされている抗ヒスタミン薬を1剤服用するより、副作用が見られない抗ヒスタミン薬以外の薬を3〜4種類併用したほうがリスクは減らせると考えられています。

——効果を計る方法はありますか?

山見:耳抜きに対する薬の効果を知るためにオトヴェント(写真1)2※を使ったり、湯船に頭まで浸かり耳の抜け具合を試してもよいと思います。副鼻腔の抜けは、基本的にはダイビングをしてみないとわかりませんが、耳の抜け具合や鼻づまりの程度と同調することが多いので、それらをもってある程度予想することはできます。



■写真1

日常生活の予防策で快適ダイビングを目指すべし

ーーアレルギー性鼻炎で鼻づまりがあるときは、ダイビングはやめたほうがいいのでしょうか?

山見:陸上でバルサルバ法の耳抜きをして、スムーズに抜ければダイビング可と一応判断します。息まないと耳が抜けなければダイビングは控えます。

——「オトヴェント」はどのように使うのでしょうか?

山見:耳の抜けやすさを感覚的に判定できない方はオトヴェントを使います。大きく膨らんでも抜けなければダイビングを控えます。

——最後にアレルギー性鼻炎の予防を教えてください。

山見:アレルギー性鼻炎の方は、ダイビング直前に薬を服用するだけでなく、日常の予防が大切です(表2)。薬の効果は限定的なので、日頃から耳管や副鼻腔の通りをよくしておきましょう。


※1=第2世代抗ヒスタミン薬の中でも副作用の現れ方は薬によって差がある。アレグラ、ディレグラ、クラリチンは眠気が見られないといわれている。アレジオン、エバステル、タリオンは眠気がほとんどない
※2=鼻で膨らます医療用の風船。グレープフルーツ大に膨らむ前に耳が抜ければ抜けがよいと判定する

コラムニスト

山見 信夫(やまみ・のぶお)先生
医療法人信愛会山見医院副院長、医学博士。宮崎県日南市生まれ。杏林大学医学部卒業。宮崎医科大学附属病院小児科、東京医科歯科大学大学院健康教育学准教授(医学部附属病院高気圧治療部併任)等を経て現職。学生時代にダイビングを始めインストラクターの資格を持つ。レジャーダイバーの減圧症治療にも詳しい

*サイト内では、メールによる健康相談も受けている(一部有料)

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ダイビングを楽しむ上で気になる身体の問題を潜水医学の専門家で、自らダイビングインストラクターでもある山見信夫先生 ...
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ダイビングを楽しむ上で気になる身体の問題を潜水医学の専門家で、自らダイビングインストラクターでもある山見信夫先生 に解説いただいている月刊DIVERの好評連載。読み損ねた方や...

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