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  2018年11月25日    

Dr山見のダイバーズクリニックvol.10  花粉症 前編

今回のテーマはこれからのシーズン気になる「花粉症」です。ダイビングへの影響はもちろん、予防薬についても詳しくうかがいましたので、早めに対処しておきたいですね。


そもそも花粉症とはどんな症状ですか?

山見:花粉症とは、花粉を原因物質とするアレルギーの総称で、3大症状は、くしゃみ、水様性鼻汁、鼻づまりです(表1)。目や皮膚のかゆみ、咳やのどの違和感などが見られることもあります。鼻はアレルギー性鼻炎、目はアレルギー性結膜炎、皮膚は接触性皮膚炎(花粉が皮膚に付着したことで生じる)、気道はアトピー咳嗽(アレルギー反応による咳)などの病気や症状が現れます。

——原因はスギの花粉ですね?

山見:地域や時期によっていろいろな花粉症がありますが、国内でもっとも多いのがスギ花粉症です。平均的な花粉飛散時期は、スギ(写真1・2・3)が2〜4月、ヒノキが4〜5月、イネ科のカモガヤが5〜6月、ブタクサが8〜10月です。

——ダイビングに影響がありますか?

山見:花粉症の方は、花粉が飛散する時期に鼻や気道の粘膜が腫れ、耳や副鼻腔が抜けづらくなることがあります。快適に潜るには、ダイビング前から対策を立てておきましょう。

——どんな予防法がありますか?

山見:予防の基本は表2に示した通りです。花粉飛散については環境省花粉観測システム(愛称=はなこさん)をはじめいろいろな情報がリアルタイムで公開されていますから、上手に役立ててください。

■写真1:風に舞うスギ花粉

■写真2:スギの枝先に付いている花粉

■写真3:スギ花粉(位相差顕微鏡で観察)

薬には副作用がある!

—— 予防しても症状が抑えられないときは?

山見:薬を使用することになります。

——最近は症状が出る前に薬を服用するそうですね。

山見:初期療法といいます。使用されるのは、主に「第2世代抗ヒスタミン薬」と呼ばれる薬ですが、最近は「ロイコトリエン受容体拮抗薬」の有効性も報告されています。これまで初期療法は、スギ花粉飛散
開始予想日の1〜2週間前から開始したほうがよいとされていましたが、この10年くらいの臨床研究で、飛散予想日もしくは少し症状が出始めたころからでも十分症状が抑制できることがわかってきました。一方、効果が見られるまでに日数がかかるメディエーター遊離抑制薬、トロンボキサンA2合成阻害薬、Th2サイトカイン阻害薬は、2週間程度前から開始したほうがよいとされています。

——薬によって、違うのですね。

山見:処方された薬を漫然と飲むのではなく、何の症状にどの程度効くのか(表3)、どのくらいの日数経ったら効き始めるのか、副作用が出やすい薬かを知った上で使用する必要があります。

——薬を飲んで潜ってもいいのですか?

山見:本来、薬を使用しないと耳が抜けないような日はダイビングを中止するべきです。もし薬を使うのであれば、どういう副作用があるのか知っておくことが重要です。

——花粉症の薬の主な副作用は?

山見:インペアード・パフォーマンス(眠気や注意力低下など)といわれる副作用があります。特にダイビングでは、浅い深度で窒素酔いが発生するなど、注意しなければいけない副作用もあります。

点鼻薬が効果的?

——点鼻薬を使う方もいるようですね。

山見:鼻噴霧用ステロイド薬(表4)は、もともと第2世代抗ヒスタミン薬の内服薬より治療効果が高いと報告されていました。しかし、免疫などに影響するステロイドを初期療法として使用するのは推奨されないとして使用範囲が限られていました。しかし、改定された「鼻アレルギー診療ガイドライン
2016」では初期療法の候補薬に入れられましたので、今後は鼻噴霧用ステロイド薬を前もって使用しておくだけで快適に潜れる方が多くなるかと思います。

——鼻噴霧薬のメリットは?

山見:眠気や頭がぼーっとするなどの副作用がないので、ダイビング中のケアレスミスや窒素酔いを誘発する心配がありません。ただし、ダイビング直前に点鼻薬を使うと、水中で鼻に海水が入ったときに薬が流れ効果が現れないことがあります。鼻噴霧ステロイド薬は1日1回で効果が見られる薬が多いので、夜寝る前にするのがいいと思います。

——鼻づまりに速効性がある点鼻薬を使っているダイバーがいるようですが。

山見:ダイビング直前に血管収縮作用のある点鼻薬の使用は推奨されません。血管収縮点鼻薬には、ナファゾリン硝酸塩(プリビナ点鼻液)、塩酸テトラヒドロゾリン・プレドニゾロン配合薬(コールタイジン点鼻液)、トラマゾリン塩酸塩(トラマゾリン点鼻液)、オキシメタゾリン塩酸塩(ナシビン点鼻液)があります。これらの薬は著効しますが、ダイビング中に効果がなくなりリバースブロックを起こすことがあります。

——リバースブロックは怖いですね。

山見:リバウンドが起こり、投与前より症状がひどくなることもあるため、ダイビング直前の使用は禁忌とされています。

コラムニスト

山見 信夫(やまみ・のぶお)先生
医療法人信愛会山見医院副院長、医学博士。宮崎県日南市生まれ。杏林大学医学部卒業。宮崎医科大学附属病院小児科、東京医科歯科大学大学院健康教育学准教授(医学部附属病院高気圧治療部併任)等を経て現職。学生時代にダイビングを始めインストラクターの資格を持つ。レジャーダイバーの減圧症治療にも詳しい。

*サイト内では、メールによる健康相談も受けている(一部有料)

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ダイビングを楽しむ上で気になる身体の問題を潜水医学の専門家で、自らダイビングインストラクターでもある山見信夫先生 ...
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ダイビングを楽しむ上で気になる身体の問題を潜水医学の専門家で、自らダイビングインストラクターでもある山見信夫先生 に解説いただいている月刊DIVERの好評連載。読み損ねた方や...

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