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  2018年07月05日    

Dr山見のダイバーズクリニックvol.1 ダイビングと視力

コンタクトレンズで潜っても大丈夫? 結膜炎のときはダイビングは禁止? 気になる「目とダイビング」についてて、Dr山見に聞きました。 


ダイビング中の視覚

ーーまず、ダイビング中の視覚について、教えてください

山見:水中でマスクを付けていると、水の屈折率の関係で、物体はおよそ3分の4倍に大きく見え、4分の3倍近くに見えます。たとえば4m離れた所にある大きさ30 ㎝の物体は、3m離れた所に40㎝の物体があるように見えます。そのため、陸上より視覚低下は気にならなくなるんですよ。

ーービギナーダイバーが気をつけたほうがいいことはありますか?

山見 :「マ スクスクイズ」ですね。 潜降するとマスク内の空気が陰圧になり、マスクが顔に押し付けられます。この状態を「マスクスクイズ」といいます。最初は圧迫感 や不快感だけですが、重症のマスクスクイズでは眼球結膜(白目の部分)が充血して、むくみが見られます。目の周囲が紫色になり腫れぼったくなることもあります。潜降時は、マスクスクイズを起こさないようときどき鼻から空気を出す必要があります(マスクブロー)。

ダイビングとコンタクトレンズ

ーーコンタクトレンズを着けたまま潜る方もいるようですが。

山見:日常生活でメガネやコンタクトレンズを使っている方は、度付マスク(マスクのレンズを度の入ったものにする)を使用するか、コンタクトレンズを付けたままマスクを装着してダイビングをします。

ーーコンタクトレンズでダイビングしても問題ないのでしょうか?

山見:コンタクトレンズを使うと、ダイビング後、角膜とコンタクトの間に気泡が発生して角膜(黒目の部分)がむくむことがあります。また、水中では、マスクが外れる確率よりコンタクトレンズがずれる確率のほうが高いため、度付きマスクのほうが安全と考えられています。

ーー度付きマスクを使ったほうがいいのでしょうか。

山見:コ ンタクトレンズで潜る方は、いつマスクを装着しても常に視力が保たれます。しかし、度付マスクの場合には、メガネやコンタクトレンズを外してマスクを付け るまでの間、視力が低下した状態で過ごさなければなりません。状況によっては、陸上やボートの上でも度付マスクを付けたまま行動しなければいけないことが あります。

ーーコンタクトのほうが便利そうですが、マスククリアが心配です。

山見:コンタクトレンズを使っている方がマスククリアの練習をするときは、目をつぶって行えば外れる心配はありません。しかし、実際に水中でマスクが外れるトラブルに遭ったときは、目を開けたままマスクなしダイビングをすることになりますから、コンタクトは流れてしまいます。

ーーもしものときを考えると、使い捨てコンタクトにしたほうがいいですね。

山見:はい、水中で紛失する可能性があるため、ディスポーザブル・コンタクト(使い捨てコンタクトレンズ)を使用します。レギュラーコンタクト(使い捨てでないコンタクトレンズ)より、使い捨てのほうが衛生面で優れているという報告もありますよ。

ーーコンタクトと度付きマスク、一長一短ということでしょうか?

山見:度付きマスクと度なしマスクの両方を用意しておき、ダイビングスタイルや目の状態に応じて、直前に選択する方もいます。また、通常は度付きレンズをマスクに装着しておき、コンタクトを使ってダイビングするときだけ度なしに交換することもできます。

ダイビングと結膜炎

ーーダイビングで結膜炎になることは多いのでしょうか?

山見:ダイビング後に見られる結膜炎の原因は主に5つあります。
①細菌性
②目に入った異物による刺激
③アレルギー性
④太陽の紫外線
⑤化学物質
の5つです。結膜炎だけであれば視力が低下することはありませんが、角膜炎を合併すると視力が低下することがあります。結膜炎も重症化するとドライアイになることがあります。

ーー何に気をつけるといいですか?

山見:細菌性結膜炎や異物によって生じる結膜炎は、汚いマスクを使ったとき、汚れた手で目をこすったとき、汚水が流れ込む水域でダイビングをしたときなどに発生し ます。マスクは、ダイビング後きれいに洗い、乾燥させて保管しましょう。 マスクは顔の油脂が付きやすいので洗剤を使い歯ブラシなどで洗うこと、細菌が繁殖しやすい隅々を念入りに洗浄すること、十分乾燥させることです。湿ったま ま放置すると細菌が繁殖しやすくなります。

ーー細菌の繁殖! こわいですね。

山見 アレルギー性結膜炎の原因は、マスクのくもり止め液、ハウスダスト、動物の毛、カビ、花粉などです。滞在し宿泊施設の環境、季節、地域なども関係して、ダイビングツアー中に突然発症することがあります。紫外線による結膜炎は春から夏にかけてよく見られます。ダイビング前後にボートや浜辺で強い紫外線を浴びることによって発生します。紫外線は点状表層角膜症(角膜の浅い部分の細胞が傷ついた病気)の原因にもなります。また、化学物質による結膜炎は、廃水が流れ込む水域でダイビングしたときに発生することがあります。

目に対する紫外線の影響

ーー結膜炎以外にも、紫外線の影響はあるのでしょうか?

山見:紫外線は、結膜炎のほか、角膜炎(点状表層角膜症)、翼よ くじょうへん状片、瞼け んれつはん裂斑などの原因になるといわれています。白内障、老眼、加齢黄斑変性症、結膜のがんなどの発症にも関わっていることが報告されています。光線反射率はビーチより海面のほうが高いことがあるので、ボート上でもサングラスをかけるなどして目を保護しましょう。

ーーこれから紫外線が強い季節になります。気をつけないといけませんね。

山見:日差しが強い場所だと、1時間足らずで角膜炎が起こることがあります。角膜炎の場合、紫外線を浴びて8〜12時間経過してから目の違和感や痛みが現れます。24〜48時間以内に自然に治りますが、炎症が強いと角膜が濁った状態が続き視力が戻らないことがあります。

ーー翼状片はどんな病気でしょう?

山見:眼球結膜(白目の部分)の組織が、角膜(黒目の部分)に侵入する病気です。紫外線、すす・煙などに長期間曝されることによって発症するといわれています。翼 状片は、通常、鼻側に見られますが、ときに耳側にも生じます。角膜が引っ張られ乱視や視力低下を生じることがあります。50歳以上の中高齢者に多く見られ ます。

ーー瞼裂斑(けんれつはん)は?

山見:角 膜の両脇の眼球結膜のところにできる黄色っぽいわずかな隆起を瞼裂斑といいます。大きくなると異物感があります。紫外線、コンタクト、乾燥などの刺激が繰 り返えされることによって生じます。通常50歳以上の中高齢者に発症しますが、コンタクトを使い過ぎた20歳代の方にも見られます。

ーー目も日焼けに関係すると聞きましたが。

山見:動物実験では、紫外線が目から入ると肌の日焼けを助長するという結果も報告されています。色の濃いサングラスをかけると目の中に光をたくさん取り込むため瞳孔が開いてしまいます。サングラスは、色の濃さよりきちんとUVカットが施されている製品を選ぶことが重要です。

目の病気とダイビング復帰

ーー網膜剥離後、ダイビング復帰は可能でしょうか?

山見:網膜剥離は、網膜(見たものを映すスクリーンの役割をしている目の底にある膜)の一部が剥がれたために物が見えにくくなる病気です。網膜剥離を発症したばかりの方は、安静にする必要があるためダイビングを中止します。網膜剥離手術後のダイビング復帰は、眼科医からジョギング程度の運動が許可されてからになります。通常、手術後3〜6か月です。

ーー復帰後の注意点は?

山見:ダイビングが許可されても、振動や衝撃が目に伝わらないよう注意しなければいけません。
たとえば、タンクを背負うときに息まないこと、目に衝撃を与えないようにマスクを脱着すること、マスクスクイズを起こさないよう潜降中は頻繁にマスクブローすること、エントリーするときはボートから静かに海に入ることなどを注意しましょう。
網膜剥離の治療では、眼内にガスを注入することがあります。ガスが残った状態でダイビングをするとガスが膨張して目が傷つくことがあります。

ーー緑内障でも大丈夫ですか?

山見:眼圧が高くなる病気を緑内障といいます。眼圧が高くなると目の奥にある網膜や視神経が障害されるため、視界が欠損(暗点という)したり、見える範囲(視野)が狭くなることがあります。
緑内障の方はダイビングをすると眼圧が上がることがあります。定期的に眼圧を測定し、ダイビング後、眼圧が上がるようであれば中止します。

ーー近年、高齢者ダイバーの増加に伴い白内障手術を受けた人も増えました。

山見:白内障はレンズの役割を果たしている水晶体が濁る病気です。水晶体が濁ると網膜まで光が十分届かず視力が低下します。白内障の手術では濁った水晶体の中身を 取り除き人工のレンズを入れます。水晶体には紫外線を吸収する性質があります。そのため、網膜には紫外線が2〜3%しか届きません。
白内障手術で紫外線を吸収しないレンズを入れた方は、多くの紫外線が網膜まで到達するのでダイビングに出かけるときはUVカットメガネをかけるようにしましょう。

ーーどれくらいで復帰が可能ですか?
山見:通常、手術後4か月目からダイビングに復帰します。

ーー最後にレーシック後の復帰について教えてください。

山見:レーシックを受けると度付きマスクやコンタクトを使用する必要がなくなります。通常、手術後3か月以上経ってからダイビングに復帰します。



(月刊DIVER 2015年7月号掲載)

コラムニスト

山見 信夫(やまみ・のぶお)先生

医療法人信愛会山見医院副院長、医学博士。宮崎県日南市生まれ。杏林大学医学部卒業。宮崎医科大学附属病院小児科、東京医科歯科大学大学院健康教育学准教 授(医学部附属病院高気圧治療部併任)等を経て現職。学生時代にダイビングを始めインストラクターの資格を持つ。レジャーダイバーの減圧症治療にも詳しい。

*サイト内では、メールによる健康相談も受けている(一部有料)

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ダイビングを楽しむ上で気になる身体の問題を潜水医学の専門家で、自らダイビングインストラクターでもある山見信夫先生 ...
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カテゴリ: ダイビング


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