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  2018年06月14日    

突然横穴に引きずり込まれ、頭を強打/危機からの脱出

読者の方から寄せられたさまざまなトラブル脱出体験談をPADIコースディレクターが分析・評価し、ご紹介。月刊DIVERで連載中の「危機からの脱出」のバックナンバーです。(DIVER 2018年4月号掲載)


うねりの強い海況で洞窟を潜った、ダイビング歴半年のYさん(30 本/女性)。激しい底揺れに巻き込まれて洞窟に吸い込まれ、頭にも怪我を負った体験をご紹介します。

突然横穴に引きずり込まれ、頭を強打

伊豆でCカードを取得しました。それからすっかりダイビングにはまり、器材一式、ドライスーツまで購入し、月一ペースで伊豆へ通っています。これは昨年11 月に体験した水中トラブルです。

毎月のように同僚と休みを合わせて、Cカード講習でお世話になったショップのツアーに参加している私たち。このときも西伊豆へ、1泊2日で潜りに出かけました。ゲストは私たち2人のみ、ガイドと和気あいあいとした雰囲気で初日のダイビングを楽しみ、2日目は1本目に浅瀬の洞窟ポイントへ出かけました。

経験本数はまだ20 本、おまけにドライスーツで潜るのも2回目だったので不安いっぱい。この日は快晴でしたが、海況が荒れ模様でうねりも強かったようでした。しかし、私はその悪状況をよく理解しておらず、ガイドに連れられるまま、ボートで5分ほどのポイントへと向かいました。

潜降時から体を強く揺さぶるうねり泳ぎ始めると吐き気にも襲われる

到着後すぐにEN すると、透明度はいいようですが、海面が揺れていたので、3 人ですぐにブイ潜降をスタート。水中でも体が左右に揺られるようなうねりを感じ、ガイドにサポートされながらゆっくりと水深7 ~ 8m ほどの水底に着きました。しかし私は前回、浮力コントロールに失敗して途中で急浮上してしまったため、ドライに給気するのが怖くてたまりません。そのため、この日も真空パック状態のまま、ガイドと同僚に続いて泳ぎ始めました。しばらく進むと前方に岩場が見えてきましたが、その間も体がゆらゆらする不安定感に緊張が高まります。

それでも、前の2人について岩場の􄼱間を泳ぎ進むと、浅瀬のクレバスに光が射し込む景色が見えました。その美しさに少し緊張が和らぎますが、一人通るのがやっとの狭い小道は、先ほどよりも揺れが激しく感じられ、時折来た道を強く引き戻されるようで、船酔いのような吐き気ももよおしてきます。前の2人は岩の􄼱間で生物探しに夢中でしたが、私は恐怖と吐き気がどんどん膨らむばかりでした。

目的の生物がいなかったようで、2 人が再び泳ぎ始め、小道を先へと進んでいた、そのときです。突然、体が強烈な吸引力に引っ張られて、斜め後方の洞窟に引きずりこまれてしまったのです。

「 きゃーっ助けて!」私は何が起こったのかわからず、心霊体験にでも合ったのかと思いながらも、レギュレータ越しに思わず大声で叫びます。かと思えばまた抵抗できないほどの力で洞窟の外へと体が投げ出され、再び洞窟内は引きずり込まれる……。恐怖で全身が硬直したように動けなくなってしまい、その怪奇現象に翻弄されるばかり。そうして何回か往復した挙句、外へ放り出されるタイミングで出口の岩場に頭を強く打ち付けられてしまいました。一瞬、脳震盪のような、視界が真っ白になる感覚を感じながら、吐き気に頭の激痛まで重なり、ますます一人では判断も対処もできなくなってしまいました。

強い吸引力はまるで怪奇現象! 岩場に頭を打ち付け意識も朦朧と

「 助けて……」心の中でそう願いながら、引きずり込まれては投げ出され……。どのタイミングだったかはほとんど記憶にないのですが、私の緊急事態に気づいたガイドが、私の腕を強くつかみ、猛スピードでその魔のゾーンから連れ出してくれ、なんとか危機を脱出することができました。私は頭の痛みと吐き気、意識も朦朧として自力で泳ぐことも忘れ、その後はそのままガイドに牽引されながらブイへ戻り、EXしました。

陸に戻り、ガイドに出来事の一部始終を話すと、運悪く横穴の側で強いうねりに巻き込まれたとのこと。強打した頭部は腫れ上がり、大きなたんこぶができていました。念のため氷水で冷やして安静に休みながら、その日はそのまま帰宅。幸い、その後は気になる症状もなくこぶも引きましたが、あの恐怖体験は忘れられません。

海況に応じたダイビングポイント選定も、大切な危機回避法

うねりのあるコンディションの中、浮力調整がうまくいかなかったこと、またドライスーツに不慣れだったことがトラブルの原因です。穴状の地形でうねりがあると、吸い込まれるような水流が発生するのはよくあることです。今後は、まずはドライスーツでのダイビングに慣れること。そしてうねりがある海況は、洞窟のような地形ポイントは避けましょう。もし引き込まれてしまったら、周りに注意しながら着底し、可能な限り水底に近いところを移動しましょう。

コメント=我妻 亨( PADIコースディレクター)

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カテゴリ: ダイビング


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