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  2018年05月23日    

透明度1mでロスト、砂も巻き上げ視界ゼロに/危機からの脱出

読者の方から寄せられたさまざまなトラブル脱出体験談をPADIコースディレクターが分析・評価し、ご紹介。月刊DIVERで連載中の「危機からの脱出」のバックナンバーです。(DIVER 2018年3月号掲載)


初めて春濁りシーズンに潜った、ダイビング歴2年のWさん(30 本/男性)。グループを見失い、一人で数々のトラブルに見舞われた体験をご紹介します。

透明度1mでロスト、砂も巻き上げ視界ゼロに

 僕は2年前に伊豆でライセンスを取得し、その後は3か月に1回のペースで、伊豆を中心に潜っています。これは昨年の春濁りシーズンに体験したトラブルです。 この日は講習時から利用しているショップの日帰りツアーに参加しました。ゲストは女性2人と僕の計3名で、西伊豆のボートポイントへ。僕は年末年始ツアーに参加して以来3ヶ月ぶり、ドライスーツで潜るのは3回目でした。おまけに、噂には聞いていた春濁りの海を初めて体験するとあって不安もあったのですが、和気あいあいとみんなで現地へ向かいました。 到着すると、海面は穏やかですが透明度は1~2mとのこと。ガイドは苦笑いしながらブリーフィングをする中、僕は内心「そんな視界不良に潜るなんて……」と、いっきに緊張が膨らみます。体格が大きい僕はエア消費も激しく、中性浮力も自信がなかったのですが、ガイドに丁寧に指導してもらいながら、準備を進めました。

突然、ガイドの姿が消えた! 砂嵐を巻き上げながら一人さまよう

 視界は悪くても生き物は豊富とのことで、楽しみも反面、ドキドキしながらポイントへ到着し、さっそくEN してロープ伝いに潜降を開始します。が、水中はこれまで見たことがないほどの緑一色。すぐ側にいるガイドの影もぼんやりとしています。
「一瞬でも見失ったら終わりだ……」と手が震えるような恐怖を感じながら水底に着きますが、全員が集合しているかどうか、僕は周りを見る余裕もないまま、ガイドの影が動き出すのに合わせて、彼のオレンジ色のフィンについて泳ぎ始めました。
 水深は10m 前後、海底は砂地のようですが、それすら把握できないほど、僕はガイドの姿を追いかけます。そうしてしばらく泳いだところで、なぜか急に、ガイドのフィンが見えなくなったのです。「え、消えた!」一瞬たりとも目を離さないように追いかけていたつもりだったのに……。他に誰かいないか見回しますが、そこには浮遊物の舞うグリーンの世界が広がるばかり。「え、みんなどこだ?」パニックになりそうな気持ちを必死で抑えながら、ひとまず勘を頼りに前方へ進んでみました。しかししばらく泳いでも人影は見当たらず、折り返したり違う方向へ泳いでみたり。そうしているうち、目の前がどんどん暗くなるような、ゼロに近いくらいの視界になってきました。僕がジタバタとフィンキックをする間に、海底の砂を巻き上げていたのかもしれません。しかし冷静な状況判断もできず、僕はただ泳ぎ回るばかりです。
 そうしてしばらくさまよったものの、それでも誰に遭遇するわけもなく、恐怖から逃げたくなった僕は、一人で浮上する決心をしました。単独浮上の方法は講習で習った以来のうる覚えでしたが、かすかに明るい水面を目指して、浮上を開始しました。

恐怖に耐えかねて単独浮上へ! 一筋の光を見つけ駆け寄るも……。

 いざ浮上を始めると、たった一人でいる恐怖、不気味な緑色の水中から早く脱出したい一心で、自然とフィンキックも速くなっていたと思います。そうして水面を目指していた時、ふと眼下にライトのようなものがキランと光るのが見えました。「ガイドだ!」と咄嗟に思った僕は浮上をやめ、その光の方へ一目散にダッシュしてみます。向かう先にはライトがチラチラ光り、「助かった!」と駆け寄その人のフィンは白色。違うグループのガイドでした。僕が駆け寄ってきた様子からロストを察したようですが、何も言われなかったので、僕はそのグループについて一緒に泳がせてもらいました。10 分ほどしてブイに戻って来られたので、そこでロープ伝いに一人で浮上しました。
 水面に出て船を見つけると、ゲストはすでに先にEX しており、ガイドは一人で僕を探しに行っているようでした。申し訳ない気持ちで船へ上がると、ガイドも遠くから水面に浮上。船上に僕の姿を確認すると、ガイドも安心して戻ってきました。その後、僕はなぜか頭痛がしたため2本目はリタイアし、その日のダイビングを終えました。

万が一を想定し、EN 前の打ち合わせで危機回避を

春濁りの時期によくあるトラブルで、グループからはぐれた不安から、パニックになってしまっただけのことです。Cカード講習の際にも説明があったように、はぐれてしまったら1分間水中を探し、見つからなければ水面の安全を確認しながら落ち着いて浮上しましょう。透明度が悪い場合には、水中は探さず浮上速度に留意してゆっくり浮上し、水面に到達したらしっかり浮力を確保します。EN前の打ち合わせで、万が一のときにはどうするかを決めておきましょう。

コメント=我妻亨(PADIコースディレクター)

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カテゴリ: ダイビング


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