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  2018年04月20日    

ドライスーツの給気が止まらず一人で急浮上/危機からの脱出

読者の方から寄せられたさまざまなトラブル脱出体験談をPADIコースディレクターが分析・評価し、ご紹介。月刊DIVERで連載中の「危機からの脱出」のバックナンバーです。(DIVER 2018年2月号掲載)


2年ぶりに自分の器材とドライスーツで潜った、ダイビング歴5年のMさん(50 本/男性)。水中で突然給気が止まらなくなり、急浮上を余儀なくされた体験をご紹介します。

ドライスーツの給気が止まらず一人で急浮上

 5年前に伊豆でC カードを取得した僕は、その後1年間は2か月に1度のペースで伊豆へ出かけていました。その年の冬に器材やドライスーツも購入したのですが、2年目からはすっかり海から遠ざかってしまい、4年目を迎えた昨年から復活。これは2年ぶりに潜ったときの体験です。
 昨年11 月、講習時から利用しているショップに久しぶりに遊びに行き、また伊豆で潜りたくなった僕は、さっそく週末のツアーに参加することにしました。当日は3名の女性ゲストといっしょに東伊豆へ。僕自身のスキルはもちろん、寝かせていた器材やドライスーツも2年のブランクがあり、不安もありましたが、久しぶりの海にワクワクしていました。ガイドもお世話になっている方で、忘れていたセッティングも復習しながら準備を進めます。

手入れせず2年放置していた器材給気ボタンが突然動かなくなる!

 この日は快晴でしたが風は強く、波もあります。EN 口も荒れぎみでしたが、僕はブランクはあるものの女性陣より先輩なこともあり、いちばん最後にEN します。波に巻かれないように慎重に入水し、全員で潜降したところで沖へと泳ぎ始めました。
 水深を下げるにつれて、ドライスーツに給気をし、中性浮力の感覚も思い出しながら、数十分はみんなで水中散歩を楽しめていました。が、水深20m 近くまで進んだころ、さらに給気しようとドライスーツの給気ボタンを押した、その時です。一度押したボタンが、元に戻らなくなってしまったのです。かと思えば、スーツの中にどんどん空気が入ってきて、身体も上に吊り上げられる感覚を感じます。「え? まさか、給気が止まらない?」そうしてあれよあれよという間に、前を泳ぐみんなから離れ、一人だけ急浮上していく自分。2年のブランクだけでも緊張していたのに、突然起こった異常事態に焦りを通り越し、頭は完全にパニックに陥っていきました。
 助けを求めたくても、僕はシグナルアイテムも携帯しておらず、大声で叫びながら手足をジタバタするしかできません。反面、恥ずかしい失態を知られたくないというプライドもあり、「なんとか一人で対処しよう」と必死に考えます。こうしたトラブルは噂に聞いたことがありましたが、使用頻度も少なかったので、まさか自分が体験すると。とっさにそばの岩壁にしがみつき、なんとか急浮上は止められました。しかし給気ボタンを押したり叩いたりしてみるものの、給気はいっこうに止まる様子はありません。そんななか、ここでようやく「とりあえず排気だ!」と思いつき、左腕の排気バルブを押してみます。が、逆立ちぎみになっていたため、気休め程度しか排気できていなかったと思います。その間にも、排気するそばから給気され続けます。

水深20m から吹き上げられるも岩壁につかまり逆立ち状態に

「 このままではエアがなくなる。ここで急浮上するしかないのか、でも減圧症が怖い……」僕はエア切れや肺の破裂、さらには死の恐怖まで妄想が膨らむばかりで、呼吸が荒くなっていたのか息も苦しくなってきていました。そんななかでふと「中圧ホースを抜く」という対処法を思い出し、さっそく抜こうとしてみますが、手元もおぼつかず微動だにしませんでした。
 そうしてどのくらい一人で岩壁にしがみついていたか、ふと目の前にガイドの姿がありました。状況を察したガイドはすぐさま僕の給気バルブをいじり、中圧ホースを抜いてくれたようでした。そして排気バルブを押しながら体勢を立て直してくれ、「戻ろう!」と合図をくれます。僕は助かった安堵感で胸がいっぱいのなか、恐る恐る残圧を確認するとすでに30 を切っていました。危険を感じてすぐにガイドに伝え、僕はガイドのオクトパスをもらいながら、なんとか岸まで戻ることができました。
 EX後に給気バルブを点検してもらうと、手入れ不足で動きが鈍いとのこと。そこで現地でスーツをレンタルし、2日間のダイビングを終了。帰宅後はすぐに、全器材とともにオーバーホールに出しました。

ドライスーツや器材は、年1 回を目安にメンテナンスを

手入れを怠った器材を使ったときの、典型的なトラブルです。器材メンテナンスに加えブランクダイバーだったため、適切な対応ができなくなりました。今回のケースではホースを外すのが最善の策ですが、外れない場合には、水没覚悟で上半身を起こし、手首や首のシールを開ける方法もあります。器材やドライスーツは、なるべく1年に1度メンテナンスに出しましょう。またご自身も、リフレッシュプログラムに参加してからダイビングを楽しんでくださいね。

コメント=我妻亨(PADIコースディレクター)

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カテゴリ: ダイビング


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