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  2018年03月12日    

ケモクラインの中を危険なパニック急浮上 / 危機からの脱出

読者の方から寄せられたさまざまなトラブル脱出体験談をPADIコースディレクターが分析・評価し、ご紹介。月刊DIVERで連載中の「危機からの脱出」のバックナンバーです。(DIVER 2018年1月号掲載)


ダイビング歴6年のMさん(70本/女性)。宮古島の「通り池」でダイビング中に、視界不良から吐き気や息苦しさに襲われ、パニック状態で急浮上した体験をご紹介します。

ケモクラインの中を危険なパニック急浮上

6年前に沖縄本島でダイバーデビューした私は、その後もたびたび沖縄へ通い、2年で経験本数が50本を超えました。3年目からは仕事を転職したこともあり、年に1度、リゾートでのダイビングを楽しんでいます。これは3年目の秋に、宮古島へ潜りに行ったときの体験です。

私は地形が好きで、宮古島は憧れの海でした。ある程度のスキルを身につけてから、と3年目にようやく夢を叶え、せっかくなので有名どころは全部潜りたい、とガイドにリクエストします。すると初日に「魔王の宮殿」へ、2日目は1本目に「通り池」へ行けることになりました。この日は私以外にもう2人、100本以上のベテランダイバーといっしょのグループで潜りました。

海水と淡水が混ざり霞む池の中。透明度も悪く、吐き気すら覚える

天候も海況も良好で、出航して数十分でポイントへ到着。「通り池」の入り口は水深25m付近にあり、そこから池に浮上してふたたび潜降して戻るため、安全管理の注意点など、ガイドが丁寧にブリーフィングをしてくれます。池の地形図を見ながら、海水と淡水が混じり合って起こるケモクライン現象についても説明を受けました。期待が高まる反面、私はこのとき半年ぶりのダイビングで、思っていたより高度なスタイルに不安を覚えながら、ENしました。

水中に入り、全員で岩壁に沿って水深を下げ、入り口に到着すると、穴の中にはほの暗い光がぼんやりと広がっていました。その様子に緊張感も高まるなか、私はすかさずガイドのすぐ隣りに寄り添い、泳ぎ進みます。すると、青緑色をした水中は透明度も悪く、視界はみるみるモヤがかかり始め、船酔いのような気分の悪さも感じるほど。想像以上の視界不良に心臓がドクドクと激しく脈打ち、呼吸も乱れ始めました。

「どうしよう、怖い......」私はすぐ右隣りにガイドを確認できる距離にいましたが、それでも一瞬でその姿が消えるときもありました。いつしか憧れの場所に潜れる喜びは消え去り、楽しむどころか恐怖心がみるみると膨らむばかり。呼吸もどんどん速くなっていたのか、息苦しさが増していきました。ガイドに寄り添って進んでいたので、おそらく安全な速度でゆっくりと浮上していく途中だったはずですが、それすらも把握できないほど、頭の中は完全にパニックに陥り始めていました。

頭上を見るとかすかに明るい光が見え、早く水面に上がりたい衝動に駆られた私は、ガイドの腕を掴み、助けを求めました。呼吸の苦しさや視界不良による吐き気も激しくなり、「もう我慢できない!」そう思いながら顔を激しく左右に振ってガイドに訴えた、次の瞬間です。私はガイドの反応を待つ間もなく、水面へ向かって一目散にフィンキックをし始めていました。

ガイドの前でもパニックは沸点に!浮上後も10分以上、再潜降できず

危険を省みる余裕もないほどパニック状態だった私は、早く水面へ出たい一心で急浮上していきます。しかしどのくらい浮上したか、途中でガイドが私の足を掴み、急浮上を引き止められました。内心「止めないで」と叫ぶも、ガイドが私の前に回り込み、目を見ながら一緒にゆっくりと浮上をしてくれました。水面寸前にくるとガイドが私のBCに給気をし、池に顔を出した瞬間、私はマスクとレギュレーターを外します。恐怖から解放され、地上の空気を吸える安堵感から涙も溢れてきました。心配そうに見守るガイドに「気持ち悪くて、息も苦しくて上がりたくなって」と伝えると、「落ち着くまで水面で休みましょう」と付き添ってくれます。しかしここで終わりではなく、ふたたび潜降しなければ戻れないと説得を受けますが、私はまたあのケモクラインに入っていく勇気がなかなか出せず、10分以上は水面に漂っていました。

そうしてなんとか呼吸が落ち着いた頃に気持ちを奮いたたせ、ガイドに手を引かれながら再び潜降を開始。帰りはほとんど目をつむって連れて行かれるままの状態でしたが、水深20m付近まで潜降して、無事にボートへEXできたのでした。

パニックを防ぐには

今回のトラブルは、落ち着いて対処すればいいだけの問題でしたね。視界不良で見えないという恐怖心から、呼吸が乱れて息苦しく、いっぱいいっぱいになってしまいました。慌てて水面を目指すのか、それとも落ち着いて対応するのかが、対処の分かれ目です。恐怖で呼吸が乱れている場合、そのままだと余計に苦しくパニックになってしまいます。まずは落ち着くことを優先し、いったん水中で動くのをやめて何かにつかまり、呼吸が整うまで深呼吸をしてみてください。

コメント=我妻亨(PADIコースディレクター)

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カテゴリ: ダイビング


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